症例紹介

以前、ご紹介したクロスアーチスプリントの患者さんがメンテナンスに来院されました。丁度、初診から6年がたちました。何も問題なくされているということで、本当にお役に立てたてうれしく思います。懸念された上顎は、歯槽骨の明瞭化が確認でき問題ないと思われます。一生付き合っていけるよう、しっかりと注意をし、大切にして欲しいと思います。
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以前のレントゲン写真が次の写真になります。2002年の治療後、2005年の治療後で、上顎の歯槽骨の様子が良くわかると思います。
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btn-03 ※治療の様子は、「クロスアーチスプリント」を参考にしてください。

当医院の税務に関して開業からずっとお世話になっている方の治療を紹介します。
仕事の上で多くの歯科とお付き合いのある方でありながら、口の中はひどい状態でした。何人もの歯科医師とお付き合いのある方が、どうしてこのような状態に放置してしまったのか?歯科医師の一員として恥ずかしい思いと、歯科医師としての役目をあらためて認識した思いです。歯科医師としての務め。患者の将来を考えてあげることだと思うのです。来院される患者さんはもとより、知人、偶然会った方、営業で来られた方など関係なく、歯科医師として提案できること、相手の将来を思い考えて、声をかける。特に歯周病は治療が遅ければ、将来にわたり患者さんの大きな負担をかけます。私が学んできた知識、経験しているノウハウをみなさんに惜しみなく提案しなければとあらためて思いました。聞かれてもいないけど、ずうずうしいと思われるぐらい、相手の歯の将来について考えてあげられるような歯科医師。そうなりたいと思います。

  • 症例 39歳 男性 喫煙者
  • 主訴 奥歯が痛くて噛めない
  • 現症 慢性歯周炎 著しい上顎の骨吸収(全顎的、水平的に2/3の骨吸収)が認められる。前歯が大きくフレアーアウト(前方に突出),臼歯も傾斜している。全体的に深い歯周ポケットの形成あり。
  • 理想的な処置方針 保存不可能な歯の抜歯/歯周初期治療(除石、ルートプレーニング)/歯周外科/矯正/歯周補綴
  • 現実的な処置方針 上記より患者さんの希望で矯正は望まず。

治療前 2002/9/28

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治療後 2005/3/18

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レントゲン写真(治療前-治療後の比較)

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所感(放置して10年後は・・・)

歯科とは無関係の知人にこの症例を話したところ、「たいへんになる人もいるんだね~」と、他人事の様子。一般的な存在の歯周病をまだ他人事という認識に、ショックを受けました。我々、歯科医師としては、誰でもが歯周病と思ってもおかしくない現状と認識しているのに・・・。参考までに、今回の歯周炎を放置していると、10年ぐらいで次のような状態になると予測します。上顎総入れ歯になります。この状態で、入れ歯治療させていただくことも多いです。十分、歯周病には注意が必要です。
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前回に骨吸収が進行した歯周病を紹介させていただきました。一般的には歯周病の症状のレントゲンは骨が侵食されて空洞になっているようには見えにくいかもしれません。しかし、われわれから見ると明らかな歯周病の症状になります。少し前の治療になりますが、エムドゲイン再生医療を歯槽骨のレントゲンに焦点をあてて紹介します。

  1. 歯周病治療前 2001/9/4

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    著しい骨吸収がみられます。わかるでしょうか?

  2. 拡大(歯周病治療前)

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    左下第2小臼歯の周囲を取り巻くように、著しい骨吸収が認められます。

  3. 根管充填後 2001/10/19

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    歯髄(神経)は壊死していたため、感染根管処置、根管充填を行い、再生療法を実施しました。根管充填後の拡大レントゲンです。右の写真の赤く囲った部位が骨欠損しています。

  4. 骨再生 (Before,After 2001/10.19—>2003/7/22)

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    治療後1年9ヶ月たちました。歯槽骨が依然と違って見えると思います。歯槽骨がしっかりと再生しています。

進行した歯周病は外科的治療を行うことが一般的です。具体的には歯周病の部位の歯肉をはがして歯根を露出させ、歯根の表面についている歯石や壊死した細胞を取り除いて、さらに歯根膜と歯槽骨を再生する手術です。適応症であれば抜歯するケースでも、エムドゲインという薬剤で歯根膜と歯槽骨を再生し、歯を残すことが可能です。
今回の患者(50代女性)は、歯ぐきの腫れで来院されました。以前から同じ症状で何度も近隣の歯科医院にて投薬の治療を受けてこられたようですが、根本的な改善に至っていません。歯周病が進み、歯槽骨が失われた症状を、歯周組織再生の治療を施しました。

  1. 歯周病治療前 2008/9/27

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    腫れがひいた状態です。綺麗な歯ぐきに見えます。(歯周病初期治療後)

  2. 歯周病治療前 レントゲン

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    レントゲンで見ると歯周病のため、歯周組織が破壊されて空洞化しています。歯周ポケットの深さも5mm~7mmになっており、歯周病が進行しているのが判断できます。

  3. 歯肉の切開

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    少し強烈な写真になったことをお許しください。しかし、ここが一番ご紹介したい点になります。歯肉と歯根の間に空洞があるのが確認できると思います。歯周組織が破壊され空洞化が進んでいるのです。また、歯根にも褐色の歯石が確認できます。歯根(歯ぐきの中で見えないところ)にまで歯石が付いた状態では歯ブラシでの除去は不可能です。なおかつ、深い歯周ポケットでは歯科衛生士が行う歯石とりの限界があり、歯肉を切開して、除去する必要があります。歯ぐきの奥底に歯周病の細菌が住み着いて、徐々に歯周組織を破壊している大変危険な状態といえるでしょう。

  4. エムドゲインを塗布

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    歯根を丁寧に清掃した後、エムドゲインを塗布します。エムドゲインはタンパク質の1種で日本の厚生労働省の承認がなされておりますが、健康保険診療の適応にはなっていません。

  5. 切開した部分の縫合

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  6. 2ヶ月経過後の写真

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  7. 8ヶ月経過後

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    治療前のレントゲン写真と8ヶ月経過後のレントゲン写真です。エムドゲインによって、歯の周囲の骨が再生されているのがわかります。

  8. 16ヵ月経過後

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    2010年2月のレントゲン写真です。ここまでくると、明らかに骨が再生されていることが確認できます。

  9. 所感

    歯周病は口の中の細菌によって引き起こされます。歯の汚れから歯垢(プラーク)が発生し、歯周ポケットにまで入り込みやがて石灰化し歯石となります。歯石となると自分では除去できません。定期的に専門家による点検をおこない、十分注意してください。また、このたびの患者のように、腫れるだけの場合もあります。今回の患者は一般的な歯周病症状の進み方からすると軽度の症状にみえますが、随分と進んだ状態でした。歯周病の怖さを知って頂き、適切な治療を行ってください。

  10. 参考:歯周病症状の進み方

1. 歯を磨くと血が出る
2. ときどき歯肉が腫れる
3. 口臭が出る
4. 歯が長くなったように見える
5. 歯と歯の間に隙間が出来て、食べ物がつまり易くなる
6. 歯が動くようになり、よく咬めなくなる
7. 歯がグラグラになり、やがて抜けてしまう

虫歯がひどくなると、歯髄(しずい)に細菌が感染します。冷たいものや熱いものがしみるようになり、やがて何もしなくても激しく痛むようになります。「神経を抜く」といった言い方をしますが、ここまで進行した虫歯は歯髄を取り除く治療を必要とします。歯髄を取り除けば、痛みは治まりますが、歯髄をきれいに取り除いた後の清掃や薬を詰める作業は極めて重要な治療となります。この一連の治療を根管治療(こんかんちりょう)または歯内療法(しないりょうほう)といいます。よくある症例を参考に説明させていただきます。

  1. 適切な根管治療を行っていない
    下の写真をご覧ください。ひどい痛みで来院された患者さんの治療前のレントゲン写真です。簡単に説明しますと、一番上の緑の矢印が、歯髄を除去し薬をつめた箇所。その下の青の矢印が象牙質の歯。一番下の黄色の矢印で白く光っているのが前歯のかぶせ物になります。何が適切でないか、次に説明します。
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  2. 根管治療の質
    赤色の矢印の箇所。歯髄と象牙質の歯の境目ですが、黒っぽく映っているところがあります。ここは、空洞があり、薬が均一につめられていなか、または、神経の取り残しがあると思われます。このケースでは、根管治療を施しているものの、大きな問題を残していることになります。
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  3. 根管治療
    治療前のレントゲン(左)と、適切な根管治療を実施した後のレントゲン(右)を並べてみました。右のレントゲンに歯髄腔に薬を詰めた痕が白くはっきりと映っています。まず、薬を詰めた箇所の長さ、太さがはっきりと違うでしょう。根管治療では歯髄をきれいに取り除く作業が大変重要です。また、歯髄がどこまであるか判断するのも大切な事となります。(写真はクリックすると大きく参照できます)
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  4. 根管治療の難しさ
    患者からすると少し難しいお話になったと思います。神経をとる治療をされる場合は、丁寧な治療をしないとまた炎症が再発する恐れがあることを理解してください。一般的な治療ではありますが、大変な技術と経験を必要とする治療になります。根管治療はその歯の運命を左右する終末治療であります。下の歯の模型をご覧ください。長く埋もれ、そして先端は細くなっているのが歯根です。2本または3本、根がある歯、複雑に曲がった歯根など歯根形態の複雑さがわかると思います。神経をとる治療は一言で言えば神経をとり、薬を詰め込むだけのことです。しかし、こういった様々な歯の形状の中にある、小さな神経をきれいに取り除き、そして緊密に薬を詰めこむ事が如何に繊細な治療かご理解いただけると思います。
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  5. 根管治療(歯内療法)の重要性
    抜髄処置(歯髄、神経を除去)を行う時、どのような気持ちで治療を行うか、歯科医師の気持ちにゆだねられる事であると思います。痛みだけを除くことが仕事ではなく、非常に困難ではありますが、出来れば生涯にわたり治療していない歯と同様に口腔内で機能させることが歯科医師のお役目です。ただ、根管治療を100%完璧に出来るかというと難しいことになります。レントゲンでは表れない根管、根管外からの感染、異物反応など適切な根管治療を施しても炎症がおきる症例もあります。しかしながら、歯科医師が最適な根管治療を施す努力をすることは間違いなく再発の可能性が低くなります。患者の方にも、この治療の重要性をよく認識していただき、残念ながら神経を抜くような状態になっても、生涯にわたり機能する歯を維持できるよう努めていただければと思います。
  6. 所感
    抜髄(神経をとる)根管治療はあたりまえの治療方法ではありますが、一部の不適切な治療の結果、多くの歯の悪化を招き、抜歯にまで至るケースも少なくありません。今回のような症例(感染根管処置)は、当医院でも珍しいケースではありません。歯科医師としての質の低下や、認識のずれが大変大きくなってきていることに苦慮し、そして恥ずかしく感じております。何のための、歯科医師なのかあらためて問い直す必要があると思います。
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