進行した歯周病は外科的治療を行うことが一般的です。具体的には歯周病の部位の歯肉をはがして歯根を露出させ、歯根の表面についている歯石や壊死した細胞を取り除いて、さらに歯根膜と歯槽骨を再生する手術です。適応症であれば抜歯するケースでも、エムドゲインという薬剤で歯根膜と歯槽骨を再生し、歯を残すことが可能です。
今回の患者(50代女性)は、歯ぐきの腫れで来院されました。以前から同じ症状で何度も近隣の歯科医院にて投薬の治療を受けてこられたようですが、根本的な改善に至っていません。歯周病が進み、歯槽骨が失われた症状を、歯周組織再生の治療を施しました。
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歯周病治療前 2008/9/27
腫れがひいた状態です。綺麗な歯ぐきに見えます。(歯周病初期治療後) -
歯周病治療前 レントゲン
レントゲンで見ると歯周病のため、歯周組織が破壊されて空洞化しています。歯周ポケットの深さも5mm~7mmになっており、歯周病が進行しているのが判断できます。 -
歯肉の切開
少し強烈な写真になったことをお許しください。しかし、ここが一番ご紹介したい点になります。歯肉と歯根の間に空洞があるのが確認できると思います。歯周組織が破壊され空洞化が進んでいるのです。また、歯根にも褐色の歯石が確認できます。歯根(歯ぐきの中で見えないところ)にまで歯石が付いた状態では歯ブラシでの除去は不可能です。なおかつ、深い歯周ポケットでは歯科衛生士が行う歯石とりの限界があり、歯肉を切開して、除去する必要があります。歯ぐきの奥底に歯周病の細菌が住み着いて、徐々に歯周組織を破壊している大変危険な状態といえるでしょう。 -
エムドゲインを塗布
歯根を丁寧に清掃した後、エムドゲインを塗布します。エムドゲインはタンパク質の1種で日本の厚生労働省の承認がなされておりますが、健康保険診療の適応にはなっていません。 -
切開した部分の縫合
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2ヶ月経過後の写真
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8ヶ月経過後
治療前のレントゲン写真と8ヶ月経過後のレントゲン写真です。エムドゲインによって、歯の周囲の骨が再生されているのがわかります。 -
16ヵ月経過後
2010年2月のレントゲン写真です。ここまでくると、明らかに骨が再生されていることが確認できます。 -
所感
歯周病は口の中の細菌によって引き起こされます。歯の汚れから歯垢(プラーク)が発生し、歯周ポケットにまで入り込みやがて石灰化し歯石となります。歯石となると自分では除去できません。定期的に専門家による点検をおこない、十分注意してください。また、このたびの患者のように、腫れるだけの場合もあります。今回の患者は一般的な歯周病症状の進み方からすると軽度の症状にみえますが、随分と進んだ状態でした。歯周病の怖さを知って頂き、適切な治療を行ってください。
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参考:歯周病症状の進み方
1. 歯を磨くと血が出る |
2. ときどき歯肉が腫れる |
3. 口臭が出る |
4. 歯が長くなったように見える |
5. 歯と歯の間に隙間が出来て、食べ物がつまり易くなる |
6. 歯が動くようになり、よく咬めなくなる |
7. 歯がグラグラになり、やがて抜けてしまう |