歯周炎の患者さんの症例を紹介します。2007年11月に歯周炎が急性化し、かなりの痛みをともなうようになり、来院されました。歯周炎により上皮組織、結合組織の破壊および骨破壊の結果、著しい歯根の露出が認められます。写真にあるように、本来、歯が埋まっている歯肉(歯ぐき)のところに、歯根がむき出しになっている様子がわかると思います。明らかな歯周炎であり、危険な状態といえるでしょう。現実的にかなりの痛みを伴う為、一般的な対処法として、神経を抜き痛みを除去する方法をとることがあります。一時的に痛みはなくなりますが、いずれ、歯が抜けてしまう可能性が高いです。根本的な解決とはいえませんので、神経を抜くことは勧めしませんでした。(分岐部に病変はありませんでした)今回は、歯肉(歯ぐき)を移植し復元する治療方法を紹介します。
- 初診 左上5番6番の慢性歯周炎(まんせいししゅうえん)<2007/11/10>
- 上皮下結合組織移植手術<2008/1/12>
- 採取
- 術後の経過 その1<2008/1/24>
- 術後の経過 その2<2008/2/7>
- 術後の経過 その3<2008/4/5>
- 術後の経過 その4<2010/5/15>
- 感想 (Before-After)
歯周炎による上皮および結合組織の破壊、骨破壊の結果、著しい歯根の露出が認められています。抗生物質を投薬し、痛みと腫れに対して治療し、手術が出来る状態を待ちます。
2009年1月12日歯肉(歯ぐき)が不足している箇所に、別の場所の歯肉(歯ぐき)を移植する手術を行います。
口蓋(上顎の内側)より歯肉(上皮下結合組織)を採取し、左上5番6番に移植することにしました。このケースでは、患者の歯根の露出した箇所が厚めであったため、採取する歯肉も厚めの採取になりました。右の写真は採取した上皮下結合組織です。手術時間は1時間を少々越えるぐらいでした。
歯肉が綺麗になってきました。ここから少し歯肉がはい上がってきます。(クリーピング アタッチメント)
神経を抜いたり、抜歯することなく、以前の機能を回復することが出来ました。移植手術は高度な治療の上に、患者さんも大変体力をつかうこととなります。さ らに、歯肉炎の進行がすすめば、病気が歯の下の歯槽骨まで及ぶことになり、歯周病(歯槽膿漏)と呼ばれます。放っておくと、歯がぐらぐらしたり、抜けたりします。歯周病の怖さを十分理解していただきたいと思います。
日本の30歳以上の約80%が歯周病、あるいはその予備軍と言われています。口腔内には、毎日ご自身で丁寧にブラッシングされても、歯周ポケット内に毛先が届かず細菌が残りやすいため、セルフケアだけでは歯周炎を防ぐことが難しいのです。一度、プロフェッショナルケアーを受診されてみることをお勧めします。